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本当は何がしたいの?

2019/10/15 NOTEでの記事


例えば私だったら、自分の表現方法を追求して そこからもっと金銭的な余裕と自由が欲しいんだけど 問題はその先で、それが叶ったとしたら その後何がしたいの? 私から見れば、地位も名誉も財産も持っているのに 幸せを感じられない人間をたくさんニューヨークで見てきたからこそ これは自分自身に、子供の様な素直な心でずっと問い続けたい疑問です。

私が一時期働いていたとある会社のオーナーは 家族代々受け継いできた抱えきれないほどの資産を 何か月も旅行に出たり、買い物をしたり ひたすら豪遊しても使いきれずに 暇つぶしに会社を経営しているような、そんな人でした。


彼女にとって、高級ブランドでの買い物は 普通の女の子が、デパートで少し高い化粧品を背伸びして買うよりも気軽で まるで薬局でヘアゴムを買うように 次々とバッグや洋服を買っては ひどい時は一度も使わずに処分するため 私達社員は定期的にそのおこぼれに与っていました。


嘘のような、本当の話。


私が何の努力もなく、初めて手に入れた新品のシャネルの小さなカバンも 何千ドルのタグがついたままの革のコートも 彼女にとってはタダのゴミ。 ファッションの仕事を辞めて以来 物欲がほぼなくなった私は お買い物もまったくせずに 定期的に彼女から回ってくるお下がりを有難くいただき 着古してクタクタになったお気に入りの洋服やバンドTシャツにそれらをミックスして 今でも大切に着まわしています。


彼女は優しく繊細な心を持った人でしたが 本当の友達も恋人もいませんでした。 社会性を身に着けられずに育った特殊な環境もありますが 何よりも彼女が持つ資産によって 周りの人間に裏切られ続けてきたからです。 その寂しさを埋めるようにして 彼女は全身にタトゥ―を刻み コカインを吸ってハイになりながら 自分の好きな音楽シーンに必死で馴染む努力をし 欲しくもない高額な商品を買い続け 消費もせずにそれらを処分することを繰り返していました。


私には 彼女がボロボロの心で泣いているようにしか見えなかった。


彼女は私にとって 何か大きな気づきを与えてくれた存在でした。




本当は何がしたいの?




私の自己追及の道は果てしなく続く。

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